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午後もボランティアの方々が来て下さっています。月・水曜は皆様と歌や散歩、ゲームをして下さる方。金曜はネイルアートの方や、フラダンスを披露した後に皆様とトランプやお話しをして下さる方。また、1月からは傾聴と言って皆様のお話しを聞いて下さる方も来て下さる予定です。様々な方々との交流で、デイでの体験がより楽しいものになると期待しています。
コラム 磯先生の楽しきかな
~ 読 書 編 ~
■ カバヤ文庫の『ロビンフッド』から
ちいさい頃から本が好きでした。小学校2~3年生の頃は、カバヤ キャラメルのおまけに児童文庫があり、キャラメルについている券5枚で1冊の本が貰えました。順次新しいものが発行され、『ロビンフッドの冒険』などと引き換えて、とても楽しいものでした。同じクラスにこのカバヤ文庫の『しらゆきひめ』などを読んでいた女生徒がいて時々交換したりもしました。彼女はいつも明るく親切で好感を持っていましたが、ヒョッとしてこれが初恋だったのかも?
高学年の頃引越しをしましたが、引き続き本はよく読んでいました。6年生の頃、遠足帰りのバスにて同じクラスの女生徒から綺麗なシオリをもらいました。評判の美人だったので嬉しくて嬉しくて本を読む時は必ずこのシオリを使いました。もっとも彼女は材木屋のお嬢さんだったので木(気)が多かったのかも知れません。でもこの時の気持ちがヒョッとして二度目の初恋だったのかも?
中学生になると偉人の伝記物や英雄伝に興味が移り、野口英世や豊臣秀吉などを夢中になって読んだものです。夏休みになると学校の図書館から毎回 10 冊程の本を借り、風呂敷包みを背負って何回も家と学校を往復した覚えがあります。
■『野菊の墓』に涙す
高校・大学の生活では純文学に目が移り、夏目漱石など文豪といわれる作家の本を端から読むようになりました。ある日、図書館で伊藤左千夫作の『野菊の墓』を読んでいた所、知らず知らず涙がポロポロこぼれ落ち、ズボンを濡らしていました。慌てて窓の外を伺いて、他の生徒に気づかれないようにしましたが、きっと感動の涙だったのでしょう。この作品は 15 歳の少年・政夫と、2歳年上のいとこ・民子との淡い恋を描く伊藤左千夫による最初の小説で、代表作でもあります。恋心を抱いていた二人がある日引き離され、のちに民子が亡くなり、その遺品の中に政夫の写真があったことで、そこまで慕われていたことを知る政夫と民子の心情を思うと涙が止まらなかったのでしょう。
後年、葛飾柴又を訪れた際、“矢切の渡し” に乗って向こう岸の千葉に渡り、『野菊の墓』の舞台となった松戸市矢切にある墓の前で往時の二人に改めて思いを馳せたものでした。
■ 限りなく広がる世界
社会に出てからは様々なジャンルの小説を読むようになりましたが、その中でも推理小説に凝った時期があります。『点と線』を著わした松本清張、『人間の証明』を書いた森村誠一、『飢餓海峡』の著者水上勉などの作品は社会派小説といわれ、単なる謎解きやミステリーではなく社会性のある題材を扱いリアリティーを重んじた作風で事件の背景を丁寧に描く、そういうものが好きでした。
一方、歴史にもとづく戦記物や歴史小説、市井の人情をテーマに描いた時代小説も大好きで、『新平家物語』に代表される吉川英治、『刺客商売』の池波正太郎、『あかね空』の山本一力など
どれをとっても血沸き肉躍る或いは心の底から感動が滲み出るものばかりです。
小説を読むことにより知らなかったことを知り、分からなかったことが分かるようになり、思いもかけなかったことに気づき、目の前がパーッと開けるようなこともある、そんな思いをさせてくれる読書をこれからも続けていきたいと思っています。
最近のある調査によると1ヶ月間まったく本を読まない人の割合は60%を超すとのことですが、すぐ手の届くこんな素敵な小説を手にする喜びを一人でも多くの方と分かち合いたいものです。