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今年の “ももたろう作品展” は、7月9日(土)・10日(日)、グリーンプラザ分館にて開催します。現在、着々と展示作品を制作中です。皆さまの意気込みを感じに、制作過程のご見学も歓迎です。作品展と同時に “絵手紙・水切絵” のワークシップや、ご家族同士で意見交換ができる場として『ミニ家族会』も企画しています。日頃の悩みなど、ご家族同士やスタッフと話し合う良い機会になると思います。

一人で暮らすという選択

 「母がいつまで一人の生活を続けられるか心配です。“ももたろうさん” では、一人暮らしの方は何人ですか?」と、先日のサービス担当者会議にて息子様から質問を受けました。そのお母様は86歳。一戸建てに一人で暮らしておられ、ゆっくりですが一人でお買物へ行け、お金の管理もされていてまだまだお元気な方です。ご本人は一人暮らしの継続を強く望んでおられ、以前息子様と一緒に、近所の有料老人ホームへ見学に行ったことが引っ掛かるようで、デイに来られた日はその事をしきりに話されます。
 担当者会議で何度も何度も話し合い、出した結論は、当面在宅生活の継続でした。息子様より3つの条件を提案されました。
 ①近所の方々と夕食を食べに行ったりするおつきあいを続けさせてあげたい
 ②友達も多くいる“ももたろう” へ引き続き通わせてあげたい
 ③月に2~3回集まっている40年来の友人達とのお付き合いを続けさせてあげたい
 この3つをクリアできるような住環境を考えていくことで、お母様、息子様の双方が安心できるようにと進められています。
 現在は週3回の“デイサービス ももたろう”、週2回の訪問ヘルパー、週1回の息子さんとの昼食会で落ち着かれています。離れて暮らす息子様にとって、お母様のことが心配なのはよくわかります。「薬はちゃんと飲めているか?」「洗濯はできているか?」「部屋の掃除はできているか?」等々、心配事は尽きないようです。でもご本人は「大丈夫!」と力強いお返事。お若い時からゴルフやボウリング、お料理教室等々、積極的に外へ出て活動されていました。知識や見聞が豊富で、ご自分で何でも決めてきた方なので「こうしたらどうですか?」と提案しても「考えておきます」の一言で終わりになる事が多いのです。だから余計に息子様からは“言うことを聞いてくれない母” という感じで、前に進まない苛立ちがあるのかもしれません。先日も靴の底が擦り切れたため、息子様が新しい靴を2足買ってきてくださいました。しかし、せっかく買ってきてくださった靴を履かないで仕舞ってあるそうです。心配した息子様は、ケアマネジャーさんに電話し「どうして履かないのかデイに聞いてほしい」と問い合わせられました。ご本人は「履き慣れた靴が好き」とマイペースな回答。押し付けても仕方ありませんので、環境を整えつつ、ゆっくりと時間をかけてタイミングを待つしかありません。大切なのは、ご本人からの「受け入れサイン」を見逃さない事ではないでしょうか。
 “デイサービス ももたろう” で独居の方は45人中10人で、81歳から97歳の方々です。最年長の97歳の方は、2年前の夏、避暑がてら息子様の家に1カ月行かれました。自宅に帰られてから「嫁や息子は本当に良く気を遣ってくれたけど、やっぱり一人が気楽でいいですね」と、つくづく仰りました。庭には美しい花が咲き乱れ、数年前まではリュックを背負ってホームセンターへ種や肥料を買いに出られていました。今は、週1回来られる息子様に重い買物等をお願いすることで身体への負担を軽減しています。日々の生活面ではセンサーが見守り、動きが無いと直ぐに電話で安否を確認されています。もちろん訪問ヘルパーも入り、日々のお世話や入浴の見守り等をしてもらいながら、ご自慢の花達に囲まれて自由な生活を満喫しておられます。
 お一人では歩けない90歳の方もまた、ご本人の意思で一人暮らしを継続されています。週3回の“デイサービス ももたろう” の他に、朝と夕“ケア ももたろう” の訪問ヘルパーが食事の用意から掃除洗濯、その他身の回りのお世話全般をしています。その他にもショートステイや配食弁当など、介護保険内外の様々な社会資源を上手く活用されています。実は、訪問介護の“ケア ももたろう” を利用されている8割の方が一人暮らし(独居)をされ、日中独居を含めると9割以上の方が独居に分類されます。一人暮らしを上手に続けて行くコツは、今までの生活を考慮しながら社会資源をバランスよく組み立てる事。そして、家族のように細かな変化に気づけ、柔軟に対応できるサービスを導入する事かもしれません。介護サービスは家族の代わりにはなれませんが、家族の“目” に代わることは可能です。ご本人、そしてご家族が安心して暮らせるように、その方に合ったサービス・合った事業者選択が大切なのです。